2020/07/03 11:07
ペロタン東京はこのたび、フランス・パリと韓国・ソウルを拠点に活動する韓国人アーティスト、リー・ベー(李英培)の個展を開催いたします。リー・ベーは“炭のアーティスト”として知られ、30年にわたり炭が持つ多様な側面や性質を探求してきました。そのモノクロマチックな実験的作品により、リーは“ポスト単色画”アーティストとも称されています。本展はパリ(2018年)、ニューヨーク(2019年)に続く、ペロタンでの3回目の個展となります。
リーがパリのローカルショップで偶然見つけたバーベキュー用炭は、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』(原題:“À la recherche du temps perdu”)でいうところの“マドレーヌ”のようなものです。当時パリ在住であったリーにとって、炭は故郷・チョンド(清道)の民俗儀礼「タルチッテウギ」(※どんど焼きに似た火祭り)を想起させるものであり、古い記憶を呼び覚ましました。タルチッテウギでは旧暦上最初の満月の夜、“月の家”がこしらえられ、人々の願いが煙に乗って空へと届くよう、火がつけられます。“月の家”が炭になると人々はその欠片を持ち帰り、様々な用途に使用します。この炭は、その神聖さから、食べ物に入れると解毒作用があり、玄関に吊るせば新生児を守るといわれています。リーはこうした伝統をもとに、炭と月光(余白)を作品の題材として扱っています。
本展タイトルである“the sublime charcoal light”(崇高な炭の光)とは、つまり、炭(“月の家”)と余白(月光)から成っています。鑑賞者はカンバス上に描かれ、創られた炭に注目する傾向がありますが、リーの作品はまた同時に、常に月明かりを照り返しているのです。東アジア美術における「烘雲托月」(仮名―ばいうんたくげつー漢字の上に)、言い換えれば「月の周囲に雲を描くことで、月をあらわす」技法では、空白や余白によって月や月光を表現するように、ここでいう月光とは、すなわち余白なのです。リーの作品にはこれらの二要素(《Issu du feu》では炭と光、他のペインティングでは炭と余白)が常に共存し、相互作用しています。これまで、“月光”は展示スペースによって異なり、ペロタン・パリ(2018年)では近代都市の明かり、ペロタン・ニューヨーク(2019年)では空虚で神秘的な側面をみせてきました。次は、東京の月明かりのもとを歩むのです。
シム ウンログ(美術評論家)
*以上プレスリリースより抜粋
リー・ベー(李英培)
略歴
リー・ベーは1956年、韓国・チョンド(清道)に生まれました。リーの個展は世界各国の美術館や施設で開催されており、ウィルモット財団(イタリア、ヴェネツィア)、マーグ財団(フランス、サンポール・ド・ヴァンス)、パラダイス・アート・スペース(韓国、インチョン)、ヴァンヌ美術館(フランス、ヴァンヌ)、ギメ東洋美術館(フランス、パリ)などがあります。また、パブリック・コレクションとして、国立現代美術館(MMCA/韓国、クァチョン)、ソウル市立北ソウル美術館(韓国、ソウル)、サムスン美術館リウム(韓国、ソウル)、マーグ財団(フランス、サンポール・ド・ヴァンス)、ギメ東洋美術館(フランス、パリ)、チェルヌスキ美術館(フランス、パリ)、プリヴァダ・アレグロ財団(スペイン、マドリード)、バルジュ財団(スペイン、バルセロナ)などがあります。
展覧会会期:2020年7月3日 - 8月29日
火曜 - 土曜 午後12時 - 17時 予約制
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Lee Bae. Landscape, 2003. Charcoal on canvas. 89 x 116 cm | 35 1/16 x 45 11/16 inch. Courtesy of the artist and Perrotin.
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